レイチェル・カーソン没後60年(2)
<出版物>
(カーソンの著作物)
レイチェル・カーソンは『沈黙の春』、『センス・オブ・ワンダー』のほか『潮風の下で』、『われらをめぐる海』、『海辺』の「海の三部作」といわれる作品を遺している。このほか、出版物にならなかった講演原稿、エッセイなどを集めた『失われた森』、メインの別荘友達・ドロシー・フリーマンとの往復書簡集『Always』などが、その著作物である。
これらは、この間に、順次、日本に紹介され、なお日本語訳されずにいる『Always』以外は、すべて日本語で読めるようになっている。主著『沈黙の春』、『センス・オブ・ワンダー』は版を重ねてきた。
1987年にカーソン生誕80年事業を実施したころには、その著作物を手にすることがなかなかできなかったことを思えば、この60年のうちにカーソンは日本社会にしっかり根をはってきたといえる。
(カーソンの伝記・評伝)
カーソンの伝記や評伝についても、生誕80年事業のころはポール・ブルックスの『生命の棲家』くらいしか出回っておらず、生誕80年事業のなかで企画・出版した上遠恵子さんのブックレット『レイチェル・カーソン』は貴重な伝記資料と言えるものであった。
その後、いくつかの解説書が紹介されてきたが、2002年、リンダ・リア著『レイチェル』(東京書籍)が出版された。これは、まさにカーソン評伝の「決定版」といえるもので、これ以上の評伝は今後出ないだろうといわれている。
最近は、児童向けにいろいろなカーソンを紹介する出版が出回るようになり、簡単にその生涯をたどることができるようになった。
(日本協会の出版物)
1988年、レイチェル・カーソン日本協会が設立されて以後、カーソンの生涯や業績を語り継ぐ活動が継続的にすすめられてきた。
この中で、日本協会が関わった出版物も多数にのぼっている。前記のブックレット『レイチェル・カーソン』に続いてブックレット『「沈黙の春」を読む』が出版された。
さらに『「沈黙の春」の世界』、『「沈黙の春の40年』、『「沈黙の春」の50年』が、順次、企画出版された。いずれも原強著としているが、日本協会の活動の積み上げなしにはできなかったものである。
2007年のカーソン生誕100年事業のなかでは、『レイチェル・カーソン』(ミネルヴァ書房)が、環境文学関係者との連携の中で企画出版された。
最近の出版物としては、2021年、『沈黙の春』出版60年を前に『13歳からのレイチェル・カーソン』(かもがわ出版)が企画出版された。日本協会の総力を結集した著作物であり、好評のうちに版を重ねてきた。