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映画「サステナ・ファーム トキと1%」

映画「サステナ・ファーム トキと1%

ミツバチの大量死とネオニコチノイド系農薬の影響について論じられるようになってからずいぶん時間が経過した。この間に、ミツバチに限らず、さまざまな生き物が影響を受け、生態系が破壊され、生物多様性の危機が深まっているとのレポートが相次いでいる。

ドキュメンタリー映画「サステナ・ファーム」もその実態に迫ろうとするものである。

「ミツバチやトンボ、湖の魚、トキやコウノトリなどの絶滅の危機の原因がネオニコチノイド系農薬かもしれない」と憂慮する各地の研究者が調査をつづけ、データを積み上げていく。

当然、人間には影響が無いのかという疑問がわくのだが、「人間では実験できないでしょう」として行なうマウスの実験からは、行動異常がひきおこされるという結果が出てくる。

このような事実をふまえるならば、ネオニコチノイド系農薬の安全性についての再評価が求められるのだろうが、国や農薬メーカーの動きは、EUなどの動きに比べると、あまりにも遅い。

映画はこのような問題提起をしながら、他方で、農薬や化学肥料に頼らない農業の可能性を求めて頑張る農家の事例を追いかけるのである。

「農薬や化学肥料に頼らない農業=サステイナブルな農業」の事例は限られている。まだわずか1%。いわば「点」でしかないかもしれない。しかし、いま、その「点」をつなぎ、「面」にしていく努力が求められるのではないか。そのために消費者・市民として何ができるのか、行政には何が求められるのか。

いまから60年前、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』が出版されたことがきっかけになり、DDT、BHCなどの危険な農薬が規制されることになった。

日本でも有吉佐和子の『複合汚染』がとりあげたように、レイチェル・カーソンから多くのことを学んだ消費者・市民が、安全なたべものを求め、農薬や化学肥料に頼らない農家を探し求め、安全な農産物のグループ購入や「産地直結運動」の活動を広げていった。

食と農の安全を守るためには、このような「原点」にたちもどる必要があるのではないか。

この映画を観、「サステイナブルな農業」をめざして頑張る農家の元気な姿に共鳴しつつ、多くのことを考えさせられた。

 

※映画は「TBSドキュメンタリー映画祭2023」で上映された。監督:川上敬二郎。69分。

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