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ブックガイド スザンヌ・シマード著『マザーツリー』

ブックガイド スザンヌ・シマード著『マザーツリー』

著者はカナダの森林生態学者。大学卒業後、森林局の造林研究員として勤務するなかで従来の森林管理の手法に疑問をもち、研究の道に進み、木々が地中の菌類ネットワークを介してつながり合い、互いを認識し、栄養を送り合っていることを証明した。

「この森もまた、インターネットのようなものだった――ワールド・ワイド・ウェブ。ただし、コンピューターがケーブルや電波でつながっているのとは違い、森の木々をつないでいるのは菌根菌なのだ。森はまるで、中心点の周りをサテライトが囲むシステムのようだった。古い大きな木がいちばん大きなコミュニケーションのハブ、小さな木はそれほど忙しくないノードであり、それらが菌類によってつながってメッセージをやり取りしているのである。」

著者の、このようなアイデアが論文にまとめられ、雑誌『ネイチャー』に掲載され、反響を呼んだ。本書は、著者がこのアイデアをまとめあげ、さらに発展させていった経緯を「自伝」的にまとめている。

著者は、森のネットワークのハブ機能をもつ古い大きな木を「マザーツリー」と呼ぶにいたるのだが、彼女自身が、家族というネットワークの中で、母として、「マザーツリー」の役割を担い、やがて未来を担う娘たちにそのバトンを渡していく経緯も、本書の読みどころである。  

また、女性の科学者が社会的に認められていく過程でぶつかるさまざまな問題や、乳がんに苦しむ経験などは、レイチェル・カーソンが直面した体験と重なりあうようである。

本書の中扉には「だが人間は自然の一部であり、自然と闘うということは必然的に自分との闘いを意味する」とのカーソンの言葉が掲げられている。

 

(ダイヤモンド社 2023年1月刊 2200円+税)

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