このたび、『13歳からのレイチェル・カーソン』(レイチェル・カーソン日本協会編、かもがわ出版刊)が刊行されました。
本書の出版の意図については、本書の「おわりに」で、つぎのようにのべました。
本書は、『沈黙の春』出版60年を前に、より多くの方にレイチェル・カーソンの生涯や業績についてあらためてお伝えすることを目的に発案されたものですが、思いがけなくも、新型コロナウイルス感染拡大のなかで、人間と自然の関係をあらためて考えなければいけない、まさに人間にとっての試練の時期に企画が具体化されることになりました。
執筆者としては「いま、カーソンが生きていたら何というだろうか」と自問自答しながら作業を進めました。
お読みいただいたみなさまが、本書に散りばめた「人間だけの世界ではない、動物も植物もいっしょにすんでいるのだ」などのレイチェル・カーソンの言葉とメッセージから明日への指針をつかみとっていただければありがたいと思います。
本書が出来上がったいま、ここに書き記したことをあらためて確認したいとい思っています。
本書は、本文執筆者5名、コラム執筆者7名の共同作業でまとめられました。執筆者はいずれもこれまでからカーソンの思いをふまえ、各地でカーソンの生涯や業績を語り継ぐために、さまざまな活動を担ってきた方々です。編集・校正の段階では、本書をよりよいものにするために、担当部分はもとより、原稿全体を見渡して、率直に意見を出し合いました。この共同作業を通じて、本書はとてもよい書物に仕上がったといえます。
本書の目次は以下の通り。
はじめに 上遠恵子
第1章 若き日のカーソン(時代と生涯Ⅰ) 上岡克己
第2章 カーソンの活躍(時代と生涯Ⅱ) 上岡克己
第3章 『沈黙の春』が訴えたこと 原 強
第4章 『センス・オブ・ワンダー』に託した思い 上遠恵子
第5章 文学者としての魅力 浅井千晶
第6章 科学者としての強さ 小川真理子
第7章 未来のためにできること 原 強
おわりに 原 強
コラム カーソンの言葉ⅠからⅦまで
コラムでは、以下のカーソンの言葉について執筆者がそれぞれの思いをのべています。
Ⅰ 人間という一族が、おそるべき力を手に入れて、自然を変えようとしている。
Ⅱ 私たちは、いまや分かれ道にいる。
Ⅲ 私たちの住んでいる地球はじぶんたち人間だけのものではない。
Ⅳ 感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります。
Ⅴ 島はつねに、人の心を魅惑する。
Ⅵ 「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要でない。
Ⅶ 子どもといっしょに空を見あげてみましょう。
本書には、「森の案内人」とされる写真家の小西貴士さんに提供していただいた写真を表紙、章扉に使用しましたが、その効果はとても大きく、自然を愛したレイチェル・カーソンの思いが伝わってくるような仕上がりになりました。
本書は『13歳からのレイチェル・カーソン』との書名で出版されましたが、読者を「13歳」に絞りこんでいるわけではありません。それでも、できれば未来を担う若い人に読んでほしいとの思いをもち、13歳くらいの年代であればぜひ知っていてほしい内容を表現するように努めたつもりです。カーソンの肖像写真や関連書の書影を数多く使用していますので、親しみやすいものになっていると思います。
『沈黙の春』60年記念事業については、本来であれば、今年から来年にかけてカーソンの生涯や業績を伝える企画をもっていきたいところですが、コロナ禍の見通しがもてない中、まずは本書の普及につとめ、本書を手にしていただいた方との交流の機会をもつようにしていきたいと思っています。「集まる」ことが制約されているなか、オンラインでの交流の場をもつことも検討していきたいことです。
本書は、市内の書店で手に入りますが、かもがわ出版(TEL075-432-2868)に直接連絡していただいても結構です。定価1760円(本体価格1600円+税)。
<レイチェル・カーソン日本協会関西フォーラム代表 原 強>