レイチェル・カーソン日本協会関東フォーラムは、政府が、4月13日、福島の汚染水を海洋投棄することを決定したことに対して、以下のようなメッセージを発信していますので、紹介します。
汚染水の海洋投棄を許しません!
『沈黙の春』でDDTなどの化学薬品の使いすぎによる生態系への影響を警告したレイチェル・カーソンは、原子力開発によって生ずる放射性物質にも大きな危惧を抱いていました。 特に放射性物質の海洋投棄に関しては今から約 60 年も前の 1962 年の秋に「環境の汚染」という講演会で強く警告しています。
「もし放射性廃棄物の海洋投棄が安全であるというなら、捨てられた物質はほぼその場所にとどまっている、あるいは、予測可能な分散の道をたどって、最終的に放射性物質は崩壊して比較的害のないレベルにいたらなければならないわけです。ところが、深海について知れば知るほど、そこは投棄物が何世紀もの間、邪魔されずに眠りについていられるような穏やかな場所とは思えません。深海には私たちが従来想像していたよ りもはるかに活発な営みがあるのです。」
「海洋生物もまた、重要な役割を果たしています。放射性降下物を通して放射性物質が海洋環境に持ち込まれたとき、どのような作用が起こるかについて、私たちはもっとたくさんのことを学ばなければなりません。これまでの研究は、海水からプランクトンの群れへ、プランクトンから食物連鎖の上位の生物へ、海から陸へ、陸から海へという、非常に複雑な動きを明らかにしています。」(『失われた森』集英社より)
カーソンが講演した頃の海洋放出は高濃度放射性物質をドラム缶に詰めて海に放出したのですが、考え方は現在のトリチウム含有水の放出も同じです。海は無数の生きものたちのすみかです。彼らはすでにおびただしいマイクロプラスチックゴミにさらされて痛めつけられています。今回の政府の決定、トリチウム汚染水の海洋放出はそんな息も絶え絶えの海に、さらにトリチウムの汚染水でダメージを広げようとするもので、許すことはできません。
私たちも、海や陸の生きものも、同じ地球に住む仲間です。その中のどこかに不具合が生じれば、回り回って想像もしなかったところに影響が出る可能性があります。どのような影響が出るか、私たちはまだ知らないのです。無神経に、そして安易に海洋放出するのではなく、すでに実用化が近いトリチウム除去装置の開発を推進するとか、陸上で何年間か保管してトリチウムが減少するのを待つ(トリチウムの半減期は 12.3 年)など、別の道の可能性を模索するべきであると、強く要望します。
未来を生きる子ども達に、美しい地球を残すことが私たちの責務です。
2021年4月25日
上遠恵子(レイチェル・カーソン日本協会会長)
小川真理子(レイチェル・カーソン日本協会関東フォーラム代表)
賛同者一同